予定調和と戦うクリエイターよ無謀はよせ
わたしが嫌いな映画ジャンルにスプラッタ映画がある。
いわゆる、登場人物どいつが死ぬか予想ゲームである。
例えば、主人公の恋人っていうのは微妙なポジションである。
話の前半でケンカしてたりするとますます微妙である。
のちの仲直り→大団円の演出なのか、あとで本性あらわし→殺されなのか
ここで分岐するからだ。
恋人未満は比較的安全だ。
小柄で華奢で愛嬌のある金髪の女の子が、だんだん主人公と仲良くなるとたいがい生き残る。
死んじゃう予備軍は友人たちだ。
プリンキュッドーンなナイスバディは、だいたいが飽きない程度の頃合で死んでいく、しかも大抵はきわどい服装などしている。
死んだと思ったモンスターが生きている確率はだいたい80%くらいだろうか。
最後に静かなシーンになったら、お約束が待っている。
さて、このような類型のスプラッタムービーも、だいたいところどころで予想を裏切る。まぁ、よくあるのはシャワーシーンで振り返ったら・・・『キャッ』・・・・恋人だった、と思ったら、おなかに包丁刺さってた、という感じなのだが、ふつう死なないキャラがぽっくり死んでしまうと映画そのものがおもしろくなくなってしまうのはわたしだけではあるまい。
え?死んだよ、おいおい。
死ぬはずの人間がいつまでもギリギリ死なないのが一番ハラハラしてておもしろいのだが、小柄で華奢で愛嬌のある金髪の女の子が主人公と仲良くなりかけて死んでしまったり、とんでもないことに主人公があっさり途中で死んでしまったりするとなんだかもう、途方もないものに出くわしてしまったような感じがする。
こうなったあとで、残った者たちが力んでモンスター退治しても、もはやむなしすぎるのである。
例えるなら、席をゆずった老人がその瞬間死にそうなほど恥かしげにするような。
慰めれば慰めるほどどこまでも落ち込む友人のような。
かわいくピースを決めたつもりがどう見ても指が鼻に入ってるように見えるプリクラのような。
くすぐりっこからえっちへ行くつもりが本気で相手を怒らせてしまったような。
裏切られたお約束の代償は、意外と高くつくのだ。
予定調和は人の期待を裏切らないための生きるためのセオリーであり、基本的に裏切ってはいけないお約束だ。
たしかに予定調和だけの人生はつまらない、だがしかし、予定調和に果敢に挑むときは、予定調和の心地よさを上回る感動を与えないといけない。
それがお約束やぶり者の義務だ。
校則を破った服装が校則よりダサかったらダメなのだ。
浮気してた相手が奥さんよりブスでバカで性悪ではダメなのだ。
バンドマンが貞節な紳士でいるなら音楽がべらぼうにうまくないとダメなのだ。
拉致された国民を守りそこねた国家が危害国に援助なんかしちゃダメなのだ。