競馬で勝つ

最近実に3年ぶりに競馬を見に行った。


初版のダービースタリオンのおかげで競馬に興味を持ち、ダービースタリオンのおかげでギャンブルとして競馬にのめりこむことなく、その奥深さを垣間見ることができたと思う。
競馬場では賭けることは二の次なので、食べ物を買いにいくときやこれといって考えがまとまらないときは買わずに見送ることも多い。


ただ、勝つことに興味がないわけではない。
実は大有りである。


競馬の必勝法というものを研究するのが好きだったのだ。
競馬場では勝つことは二の次だが、理論の場では勝たねばならない。半年間競馬場に通うことなく、研究に没頭したこともある。
結論から先に言うと、競馬のギャンブル的な必勝法というのはない。
もちろん、アメリカにも日本にも勝ち越している人はたくさん居るし、それを職業とする人もいる。
彼らの勝ち方は「鞘を取る」方法に近い。元金の数倍の年利を稼ぎ出すことは(少なくともわたしの知る限り)ない。
彼らは数十万、数千万、あるいは時に数億の資金を運用して平均して3〜20%の利益を得ていることが多いようだ。
世の中にはそれより粗利益率のいい商売は掃いて捨てるほどあるので、あえてこの方法を取るのは利益より、競馬が好きだからなのだろう。


競馬の必勝本もいろいろなものがあるが、論理と実践に裏打ちされたものは数少ない。


その中でも、これから紹介する三冊は出色と言っていいと思う。




「競馬探求の先端モード」
いわゆるスピード指数の先駆者がその論理をわかりやすく説いている良書。前段の半年間の研究はスピード指数を計算するソフトを作って過ごしていたのだ。
スピード指数の原理は非常に簡単で、馬のレースタイムから馬の潜在能力を指数化し、比較して予想する。なので初めての場や初顔合わせのレースでオッズが偏向したとき威力を発揮することが多い。
わたしのやり方は、データ区間中のすべての場に一定割合以上登場する馬をすべて抽出し、それを「基本馬群」として基本馬群の平均的な速度差をすべての競馬場のすべてのコンディションで統計する。
これが「競馬場指数」と「馬場コンディション指数」となり、ある競馬場のあるコンディションで○○秒で走る馬は、別の競馬場のあるコンディションでは○○秒で走ると予想できる。という感じだ。馬のスピードを比較する素地を作り、初めての場や初めての顔合わせでも、どれだけの力差があるか客観的に比較できるのだ。
さまざまな苦難を乗り越えてそのソフトは完成し、過去4年の中央競馬全レースのデータを解析し、次年一年分をそのデータから予測して購入するシミュレーションも行った。結果は年利12%。相当な資産がなければこれでいい思いをすることは不可能だと思った。しかも、競馬新聞にスピード指数が掲載されるようになって、ソフトを使う理由もなくなったし、スピード指数を織り込んでオッズが最適化されてしまったので利ざやはさらに減ってしまった。今でもレース結果が分散する地方競馬では努力しだいでこのソフトを動かすことはできるだろう。
(もちろん、データ収集の努力に見合わないとは思うが)
スピード指数の原理や、それを発見して誰にも知られず応用して大きなレースを勝ち抜くドキュメンタリーとして最高におもしろい読み物である。


「超馬券論」
馬を一切見ず、一切予測せず、馬券の買い方で鞘を抜く方法である。簡単に言うと最もオッズの低い馬券が最も当たる。というしごく当然の観察結果から、単勝一点賭けで「外れるときより当たるときに多く賭ける」ことで鞘を抜く。しかし外れるとき、当たるときがわからないのが競馬である。どのようにしてそれを実践するかというと、負けたら次のレースでは「負け金プラス目標利回り」だけの利益がでるように徐々に掛け金を上げていくのである。こうすると何回負けようが最終的には「目標利回り」が残る。結果からすると、負けているときの掛け金の総額よりも勝ったときの掛け金総額の方が多くなり論理的に、「外れるときより当たるときに多く賭ける」ことができる。平均するとオッズが一番低い馬券はおよそ3回に1回当たる(らしい)ので、目標利回り10%程度に抑えればそれほど多額の資金は必要ない。
これは間違いなく必勝法である。
ただし、これを実践すると競馬がつまらなくなる。
読み物としては数理に走るのはいたしかたないが、簡単な計算しか使わないし、語り口調が講義のようで楽しく読める。


「競馬馬の見方がわかる本」
馬そのものをパドックで見抜く方法である。姿勢や筋肉のつき方、汗のかき方、目、歩き方、走り方、しぐさ、などいい馬の見方が丁寧に解説してある。
たぶん、競馬をもっとも楽しく見る方法はこれだろう。
具体的な実践方法はなんにも解説してないので、賭け方を間違えればこの知識で簡単に破産することができる。
しかし、馬を見るのは重要だ。それに、競馬新聞とパドックだけで場当たり的に競馬を楽しむには最低限の知識だと思う。




最終的にわたしが到達した馬券の買い方は、「馬を見る」である。自分流に適当にアレンジしているので、上記の本の解説ととらないで欲しいのだが、基本的に尻を見れば馬の体力とコンディションはわかる。筋肉がぐりぐり見える馬はやせすぎ、あまり見えない馬は太りすぎ、見える筋肉がたくさんついていてボリューム感があり、高く盛り上がっている馬がいい。先行タイプの馬は多少ボリューム感が劣っていてもスラッと美しければよい。
次に、歩く姿勢で見る。首を高く上げてきょろきょろしない馬がよく、尻尾を下げている馬は買えない。多少のイレコミは返し馬での騎手との折り合いが悪くなければ無視。
あとは競馬新聞の予想も適当に判断に入れながら、連複で買う。
基本的には一点買いだが、迷ったときも3〜4点以内にまとめる。
ボックスで買い「配当負け」する原因は「当たるのは一組」という基本を忘れ、可能性と組み合わせを考えすぎているからだ。競馬は可能性と組み合わせを考えるゲームではない。勝つ馬を当てるゲームだ。絞り込めないということは、すでに負けているということだ。頭で流すくらいなら単勝一点全力賭け。
基本は馬連だが、オッズが負ける時と気になる馬が枠で収まるときは枠で買う。


前回は2レースから7レースまで遊んで、3勝(うち連勝複式一点買い2)2負およそ200%の回収利回りであった。


ちなみに、JRAは毎年競馬予測ソフトのコンクールを行ってる(もしかしたらもうやってないかも知れないが)そこで上位に来るソフトは要注意である。買い方がたいてい中穴や穴を狙うようになっていて、大きな穴を拾った年には上位に来るが、はずすと悲惨な結果になる。ソフトのクセとレース結果との相性があるのだ。穴を拾うソフトはパラメータでクセを作り安いので、わたしがソフト制作者なら、同じソフトの外見とパラメータを変えて複数売り、一番当たってるソフトを売りまくる。
やはり毎年年利で10%そこそこ稼ぐソフトは本命を丁寧に拾うパターンが多く、信用できる。