○妥協線上のオトコがふりまく不幸は蜜の味

学生時代はよくもてた。


みためカッコよかったからではない。


人気があったわけでもない。


ブスにとって、ちょうどギリギリつりあうところにいる「ぜいたく言えないオトコたち」の中で、ちょっと他のオトコより変わっていた、からである。


本を読んでた。


劇を書いてた。


話をするとおもしろい。


そんなところが、高望みをあきらめて見た目を妥協したブスにヒットしたのだ。


神の見えざる右手が動いた結果か、皮肉にもおれはメンクイだった。


そんなわけで、こころならずも、ブスを泣かせることが何度かあった。
もちろん「こころならずも」にきまってる。
でも、付き合えないものは断るしかないじゃないか。


ところが、たかだか妥協線上のオトコが、わたしを振るなんてと思うらしい。
しかも、たかだか妥協線上のオトコが、女の子を泣かしたりすると、女の子全体の反感を買うのだ。


「Aちゃんの気持ちわからないの?なんてやつ」
とりまきにつめよられたこともある。
彼女はみんなにさぐさめられてた。
Aちゃんの気持ちはわかるよ。
わかるけど、でも、それは別でしょ。


しかも、こっちは告白されるまで「まったく眼中になし」だから、無防備に「いいやつ」だったからなおさらだ。


簡単に相手を友達だと思ってしまうおれは、逆恨みを買うタイプだったのだ。


まぁ、そんなわけで、クラスで人気のオトコやクラスのアイドルの噂話の裏側で、ピラミッドの底辺でもこんな葛藤がいろいろあった。
みんな真剣だったよなぁ。


ほんと。


でも、なんで恋愛中でらぶらぶのカップルはみんな遠巻きに噂するだけなのに
「なんたら事件」のたぐいになるとああもいっせいに盛り上がるんだろうね?


みんな好きだよな。ほんと。不幸が。(笑)


もっとも、シアワセなやつはほっといて、不幸なやつに関心があつまるってのは実は、ヒューマニズムの原点だし、動物に見られない人間社会の特徴でもある。


逆だったら恐いでしょ。


「あいつはシアワセらしいぞ、おい」
「ひゃー、そりゃたいへんだ。こんど集まってみんなで語ろう」
「あいつは不幸らしい」
「ほっとけ」


それはやっぱいかんでしょ。


他人の不幸は蜜の味、というけど、実は人間はそういうふうにチューニングされている生き物なんだ。


それが、人間らしさ、優しさの原点。


そういうふうにできているわけだ。