読書体験

最初にはまったのは確か、『椋鳩十』だったと思う。
小学校3年くらいのころから、図書館という学校の機能にハマりスーパーユーザーの名を欲しいままにした。間違いなく学校で一番読んでいた。図書カードの消耗が早いので先生から無断持ち出しの許可をもらっていたほどだ。
うちの小学校の図書館の広さは小さな教室程度だったから、卒業までに伝記以外のほとんどの物語ものは読んでしまった。6年生のころは、読んでない本を探すことに何時間も費やしていた。


長い物語を読みきる楽しさとシリーズモノの楽しさをはじめて教えてくれたのが


『あかんぼ大将〜』シリーズ 佐藤さとる


であった。そして、ハヤカワの挿絵付きのSFシリーズでひときわ大好きだったのが


『月は地獄だ』ジョン・W・キャンベルJR


これは将来古典SFをかじる礎になった。
いとこから分捕った


『逃げたロボット』デル・レイ


も好きだった。この三冊は自分の蔵書にならなかったが死ぬほど読み返した。


やがて、ハズレを引くことを嫌うようになってからは作家系譜で読むことが多くなった。


椋鳩十』→『シートン動物記』→『ファーブル昆虫記』


とつらなるmy動物系書物はやがて高校時代に


『ムツゴウロウシリーズ』→『北杜夫』→『吉行淳之介』→『遠藤周作』→『芥川龍之介』→『夏目漱石


と続く。影響を受けた作家をさかのぼって行ったのだ。
特にムツゴロウにはずいぶんはまった。


シートン動物記では、ほとんどが動物の一生を描くスタイルなので、どんなすばらしい主人公も最後はいかにも動物らしい死に方をする。その突き放したような現実感と死のありかたはわたしの原点となった。と思う。
とにかく活字中毒で、小学校から高校まで新しい教科書を貰うのを楽しみにする不思議な子供だった。国語の教科書を読むのだ。ほとんどもらったその日に読んでしまった。そして、そこから作家を拾い上げて耽溺する。書店が近くになかったので、情報にも飢えていたのだ。


例えば


『風車小屋だより』ドーデ


中学生当時繰り返し読んだ本では、これとムツゴウロウの青春期・結婚記・無人島記がダントツである。アホほど読んだ。どちらも今では甘すぎると思うが描写力はすぐれていた。と思う。


そして、中学3年の推薦図書


老人と海アーネスト・ヘミングウェイ


これはもう、今や聖書である。もっとも、今一番繰り返し読むのは


日はまた昇る


である。これは百冊買ったといっても誇張ではない。枕もとに置いたり、風呂においたり、車にのせたり消耗が激しい上に、気に入った友達にさっと手渡すことも多かったので、つねに買いつづけていた。実は、今日も買って入院中の社員に差し入れた。
これはつきあった女すべてにも贈った。デート中に本屋へ立ち寄ってさっと買ってわたすことが多かった。(感想を返してきたのは最初のひとりだけだったが)
未だに、この本の真髄を共有できる女性と愛し合いたいという夢は捨てきれない、が、でも女性にこれがわかったら、それはそれでつまらないとも思う年頃である。


ヘミングウェイ』から『レーモンド・チャンドラー』も当然の系譜である。


「失われた世代」のアメリカ文学は一通り読んだはずだが、ヘミングウェイ以外ひとつも思い出せない。ニックの出てくる短編物も、『キリマンジャロの雪』もいい。
『長いお別れ』は未だに読み返す。物語よりも、タイトルと本の厚み(にさえ現れる主人公のアレ)にやられた。なんというか、タイトルとテーマよすぎである。(わかる人は十分わかるはず)


ここ10年で、最高の作品と言えば


『シーラという子』トリイ・ヘイデン


7歳のとき3歳の子供にイタズラで火をつけた異常児の物語である。
痛い系日記作家はまずこれを読んでなければ承知しない。
人間のはかなさと強さとすばらしさを徹底的に教えてくれた。
主人公が女の子で、ここまで好きになった子もいない。
あまりの痛々しさに先を読むのが恐くなった本。
この本がなかったら、もっと小うるさい父親になっていただろう。フィクションなんかちゃんちゃらおかしくて読む気が失せてしまうほどのノンフィクション。
これも入院中の社員に差し入れた。(なんだかめちゃくちゃ濃口と薄口の本を同時に与えられて、ちょっと気の毒である。罪滅ぼしにさくらももこの新刊も入れたが(笑))


そして、ノンフィクションといえば


『キリング・フィールドからの生還』ハイン・ニョル


映画『キリング・フィールド』のカンボジア記者ブランの役をやった彼は、映画を超えるすさまじい体験をこの書に綴っている。両方まだなら、まず映画をオススメする。本を先にすると映画がヌルくてつまらないからだ。先を読むのが恐くなった本パート1である。


あと、好きな本、影響を受けた本と作家をただただ羅列する。
趣味が一致したらコメントをどうぞ、というわけである。


アルジャーノンに花束を
(シーラという子が出るまではこれも思い入れが深かった。
そもそもシーラという子のオビにダニエル・キイスの推薦が
あったので読んだのだ)


かもめのジョナサン
(いまではちょっと甘いが「学ぶ」姿勢は今も好き)


『イントルーダーズ』
(地味ながらリアルさと物語と適度な配合で、今も何度も読んでいる)


『T・クランシー』
(ジャックライアンもいいが「容赦なく」のクラークも)


複雑系
(これを読み返すやつはちょっと異常である。わたしだが)


さくらももこシリーズ』
(ちょっといけすかないところも味である。文体と感性がいい)


レッド・ドラゴン
(「羊たち〜」よりもいいかも知れない、いや、しかし、でも)


『リプレイ』
(来世を信じない男が夢中で読んだ生まれ変りものの変種傑作)


竜馬がゆく
(お〜い竜馬も良著である。どっちも長いのにべこべこである)


大空のサムライ
零戦で64撃墜のエース。一機の僚機も死なせなかった男の記録)


これらを系譜の元として、さまざまな本を読みまくったが、もし無人島に持っていくならここに挙げた本だけで一生満足である。


次点に『ワイルド・スワン』も入れておく。


これらの系譜の本で、あなたのおすすめがあればぜひご一報いただきたい。最近良著に飢えているので、今日のこの企画となったのだった。