○くされ縁

恋愛は経験を積めば積むほど長くなる傾向にある。


ここの日記をあちこち読み漁るまでもなく、経験の浅い恋愛の存続期間が短いのにはワケがありそうだ。
恋愛のスタート直前、恋愛というものに対するイメージは非常にピュアで高いテンションの精神状態を想定している。
そして、高いテンションが低下すると『恋が終った』と自覚し、自覚のとおりの行動をとる。


しかし、恋愛を重ねると、ブランク期間の退屈さと現在を比較して少しでも刺激がある間は『恋が続くように努力する』ようになる。


したがって、テンションの高い期間が延びたわけでもないのに、恋愛期間は徐々に長くなる。


こういう状態でもやがて恋愛が終るのは、その恋愛が『割に合わない』と判断した場合である。


ちょっと嫌なことがあると、一時的に相手への感情は『世界一最低なやつ』にまでレベルを下げるが、『でも前にこんなことやあんなこといいこともあったしなぁ』とピリオドを打つのに躊躇してしまう。


そんな、こんなことやあんなことがよほどいいことだった場合、とてつもなく感動した経験があると、それを打ち消すとてつもない経験をするまでは恋愛は続くことになる。ブランク期間を考えると、そのほうが得だからだ。


そんな場合にもやがてはそれを打ち消すに足る十分な嫌な事件は必ず起こる。
気持ち的にはもう決定的に『別れる』へ傾いた場合でも、多くの場合利害関係人である相手がその原因なので『謝らせないと気がすまない』という感情も同時に生まれる。


また、そんな事件を起こした当の本人は相手のようなダメージを受けていないので当然『こんなことで終らせたら嫌だ』と判断し、必死で謝ったり機嫌をとったりするだろう。


『謝らせないと気がすまない』という感情と『関係を維持したい』という感情は結局利害が一致するので最後には嫌な思いを払拭して関係は修復する。


恋愛をはじめたころ、相手が与えてくれる感動が恋愛を強力に牽引するが、恋愛が長引いた場合、『貸しもあるが借りもあり』で、その総量が膨大なために収支の見当がつかず、付き合ってよかったのか悪かったのかもわからないが、とにかくいろいろと『貸しもあるが借りもあり』なので、別れるための事件はよほどのものが必要になってくる。


簡単に言ってしまえば、これがくされ縁というやつである。


『貸しもあるが借りもあり』という状態は『好きなところもいっぱいあるが嫌いなところもいっぱいある』というのとほぼ同じだ。
収支で言えば行って来いでチャラ、好きでも嫌いでもないのだが、おなじ0でもただの0と100+(−100)=0とでは違う。
恋愛の初期では好感度10でも個人への好感度としてはダントツなので、めちゃくちゃにのぼせることができるが、それでも総量としての100には遠く及ばない。
仮に−100とワンセットで収支は0でも、である。


よい恋愛は仮に−100とワンセットになっていてもプラスの方が110くらいある。常に10のアドバンテージがある。
これは腐れ縁とは言わない。


問題は常に10のアドバンテージとはなにか、である。
相手が常にアドバンテージを維持するだけの感動を与えつづけてくれればそれでいいのだろうか?
残念だが、よい恋愛をするには才能が必要だ。
例えば−10に匹敵する嫌なことがあったとき、相手が関係を修復しようと努力したときそれを10と評価しないことだ。11と評価するのだ。


嫌なことがあった直後にそんなことできるだろうか?
だから才能が必要なのだ。
ほとんどの人は嫌なことがあったあとのプラス評価を逆に下げてしまいがちだ。
まぁ、9くらいだろう。
すると−10に対して9だから収支は−1なのだが、もともとのアドバンテージで10くらいはあるのでそれが9になる。0になったら恋は終わりだが、一気に−50くらいになってまた一気にプラス49になったり、大きく上下変動しているとだんだんワケがわからなくなってしまう。
株相場が大きく上下している時に『平均株価』や『時価評価』が意味をなさなくなるのと同じだ。持っている株に価値があるのか、ないのか、将来上がるのか下がるのかわからなくなると株を手放すことはできなくなる。


別の知らない株に手を出して酷い目に会いたくないからだ。


他人からみて変動の激しい恋愛ほど腐れ縁に陥りやすく、逆に平穏無事な関係ほどあっけなく終るのはこのためだ。


人間同じ生きるならなるべく高い頂きを経験した方が得である。
反動ででかくマイナスに落ちたとしても。


大切なのは、そのあとの評価を下げすぎず高めに維持すること。


それと、収支がわからなくなったら、早めに別の株の評価をはじめること。(笑)