○TOCで幸せになる方法

TOC』『ザ・ゴール』『ゴールドラット博士』これらのキーワードでグーグル検索すれば、これがアメリカの経営手法のトレンドだくらいの雰囲気はすぐにつかめるだろう。
アメリカ復興の最大のキーワード。
10年間はこの本を日本人には翻訳しないと言い切った博士の言葉。
さまざまな伝説も浮かび上がってくるだろう。


しかし、それらの過剰な伝説を払拭しても、われわれに何か得になることがあればそれはそれでいいのである。
いっちょ利用してやろう。なのである。


今回は、ザ・ゴール2で登場した問題解決手法などを生活に応用することに挑戦してみる。


ゴールドラット博士は、ネットワークで物事を見る。


まず、キーワードはこれである。


さて、ここにいろいろ問題を抱えた女性がいる。


まず、彼女の問題を列挙してみよう。
『金が無い』『仕事が無い』『健康でない』『借金がある』『ガスが止まっている』『炊事できない』『PCが不安定』『夜眠れない』『朝起きれない』『時々飢える』『運が悪い』『人に酷い目にあわされる』などである。


(こ、このサンプルって)


問題を出すときは、思い切り考えつく限りの問題を書き出すこと。


これらが同時に襲ってきても、耐えて生きているだけでその生命力は称えられるべきものである。弱い人間なら、とうに人生投げている。


しかし、これらの問題が同時に降りかかる混乱の中で、それでも幸せになるには問題を解決しなけばならない。


では、ゴールドラット博士の『現状問題構造ツリー』を使ってみよう。
現状問題構造ツリーの簡単な考え方は、多くの問題が同時多発しているように見えるとき、それらの問題には必ず因果関係と連鎖のネットワークがある、ということである。


先ほどの彼女の例では、『金が無い』→『ガスが止まっている』→『炊事できない』→『時々飢える』などは好例である。
また、『金が無い』の上流には『仕事が無い』が来そうである。


このように現状問題を連鎖のツリーにまとめてゆく。
このとき、新たな問題も発見する事ができる。


例えば、『借金がある』は『金が無い』と関係がありそうだが、直接因果関係をみつけるには何かが足りない。
『借金がある』→『返済をしないといけない』と
『金が無い』→『借金の返済ができない』となる。
借金があって、返済しなればならないとき、金がないと、返済ができない、のだ。


また、ここで新たな問題を更に発見するかもしれない。


『金が無い』→『ガス代が払えない』→『借金をしてガス代を払う』→『新たな借金が生まれる』しかし、金が無いのでここで問題が循環してしまう。


問題は循環してもかまわない。


また『PCが不安定』というのは一見関係なさそうであるが、その原因には『OSが不安定』という問題があり、ここに『OSを変えられない』という条件があわさったとき、はじめて『PCが不安定』という問題が出てくる。
このとき『OSが不安定』なのは彼女の問題ではなく、マイクロソフトの問題なのであるが、『OSが変えられない』というのには彼女の問題があり、その上流にも『金が無い』が関係している。


多くの問題が『金が無い』に関係していて、この前提が覆るとそれより下流の問題は消えてしまうことは、わざわざここまでしなくても馬鹿にもわかるであろう。


このように、問題の連鎖をどんどんとつなげていって、問題が構造を持った木(ネットワークツリー)であることを認識するのである。


『人に酷い目にあう』のはなぜだろう?


『嫌なやつでも仕事上付き合わなければならない』→『人に酷い目にあう』
かもしれないし、他にあるかもしれない、この上流にも別の問題がありそうだ。


『金が無い』→『嫌でも仕事しなければならない』→『嫌なやつでも仕事上付き合わなければならない』となるかも知れない。


どんどん出てきそうだ。


『運が悪い』→『金が無い』


あるいは『運が悪い』→『健康でない』などなど。


さらに続けて、『仕事がない』→『金が無い』という連鎖も発見できる。


また、『健康でない』→『仕事が無い』という連鎖もあるかもしれない。


じゃあ健康になりさえすればええんかいっ。
アルアル大辞典でも見ればええんかいっ。
それともなにか!世の中運かいっ。


という絶叫が聞こえそうである。


問題解決の際、上流の問題は得てして解決しない、ということをまず認めるのだ。
運が悪いことに上流がもしないなら、それは解決できない問題なのだ。
また、運が悪い意外に原因が重なっていない『健康でない』も解決できない。


人生の問題が、運が悪く健康でないこと『だけ』ならガマンできるのだ。


問題は、この後に続く、不幸の連鎖、不幸の木なのだ。


先ほどのPCの問題の上流には『金が無い』と『OSが不安定』の二つがあった。
このうち『OSが不安定』はそれより上流にはマイクロソフトの社内の問題はあろうが、このサンプルの彼女固有の問題としては最上流にあたる。
そして『OSが不安定』なのは解決しないのだ。


上流の問題は解決しないなら、どうしたらいいか?


木をもっとも小さくすればいいのである。
OSが不安定なのは仕方がないが、PCが不安定になるには、OSが換えられないという前提も必要である。一方が解決しない問題でも、どちらかが解決すればPCは安定するはずだ。


もっとも解決すべき問題は、もっともいろいろな問題の基点や交差点になっている部分である。


問題がもっとも交差し、すべての問題のキーになっている部分。


つまり、今回の例では『金が無い』の部分だ。


そして、それを解決するには、その問題を生み出している上流の問題を解決することなのだ。


ここには『借金の返済をしないといけない』と『仕事が無い』と『運が悪い』が原因として重なっている。運が悪いは最上流問題だが、他の問題は解消できそうである。


だから、彼女に仕事があり、さらに借金がなければ金の問題は消える。


さらに、二つの条件のうちどちらかが解決しても、金の問題は消えそうである。
例えば、仕事がなくても、借金の返済をしなくてよければ、ガス代およびOS代はは払える。
かも知れないし、借金があっても、仕事があれば、ガス代およびOS代は払えるかもしれない。


そこで問題解決は


1.不健康が前提でできる仕事を探す(仕事が無いを解消)
2.借金の返済をしない(借金を返済しなければならないを解消)
3.このままがんばって借金を返してしまう(借金があるを解消)


の3つに絞られる。このうちどれか一つが可能なら、あれだけ抱えた問題の木が可能な範囲でもっとも小さくなることがわかるだろう。
いくつもの問題を同時に解決しなくても、たった一つ可決すれば、問題の多くが片付くということを、しっかり理解してもらいたい。


次に、対立解消図で、これらの問題に対処してみよう。


せっかく見つかった解決方法だが、実はこれは使い物にならない場合が多い。
それぞれの解決方法には不可能がまじっているのだ。


だからこそ、彼女は問題を抱えたままでいるのだ。


そこで、ひとつづつ不可能とはなにかを考えてみる。


不健康が前提でもできる仕事を探す→不健康が前提でもできる仕事は安い
不健康が前提でもできる仕事を探す→そこにやりたい仕事がない


例えば、こんな原因があるとする。
どこかに矛盾し、対立する問題が存在しているような感じだ。
もっと単純化して、矛盾をはっきりさせてみる。


シアワセにならなければならない←不健康が前提でもできる給料のいい仕事をしなければならない←嫌な仕事でもする


なのであるが、同時に


シアワセにならなければならない←やりたい仕事をしなければならない←嫌な仕事はしない


でなければならず、シアワセになるために両立させようとしても両立しないなら、どこかのシアワセになるための前提(矢印のどこか)が間違っている(あるいは思い込みがある)ことを見つけなければならない。


が、問題がまだ残っているので次へいく。とにかく、ここの不可能はわかった。


次は借金問題である。
彼女はなぜ『返済をやめる』ことが不可能なのだろうか?


シアワセにならなければならない←借金の返済をやめなければならない←返済しない
シアワセにならなければならない←借金の返済をやめると恐ろしい目にあう←返済する


次はがんばって借金を返してしまうことが出来ない理由だ。


シアワセにならなければならない←がんばって返済してしまう←返済する
シアワセにならなければならない←がんばると疲れる←返済しない


さて、3つの問題から3つの不可能がみつかった。


さて、この3つの不可能の中で対立する前提のどこかを変えることはできないだろうか。


もし、できなければ、この問題は残念だが絶対に解決しない。


いよいよ最後に選択肢が残る。


不可能1を可能にする方法
1.シアワセになるために不健康が前提でもできる給料のいい仕事をしなければならない
  →風俗などをやる、あるいは、この前提の間違いを認め2を選ぶ
2.シアワセになるためにやりたい仕事をしなければならない
  →好きな仕事をやる、あるいは、この前提の間違いを認め1を選ぶ


どこかに間違いを探す、風俗以外に好きな仕事で、不健康が前提でもできる給料のいい仕事はないのか?など


どれもだめなら不可能2へ。


不可能2を可能にする方法
3.シアワセになるために借金の返済をやめなければならない
  →夜逃げ、自己破産など、あるいは、この前提の間違いを認め4を選ぶ
4.シアワセになるために借金の返済をやめて恐ろしい目にあうようなことはできない
  →借金を返済する、あるいは、この前提の間違いを認め3を選ぶ


どこかに間違いを探す、返済をやめる以外に借金をなくす方法はないか?など


どれもだめなら不可能3へ。


不可能3を可能にする方法
5.シアワセになるためにがんばって返済してしまう
  →頑張って返済する、あるいは、この前提の間違いを認め6を選ぶ
6.シアワセになるために疲れるようなことはできない
  →疲れるようなことはしない、あるいは、この前提の間違いを認め5を選ぶ


どこかに間違いを探す、返済以外に借金をなくす方法はないのか?など


どれもだめなら不可能1へ。


並べてみると、矛盾と問題解決方法というのが、まるで図形のように、あるべき位置にあることがわかるだろう。


問題解決が上手な人というのは、どんな矛盾にゆきあたっても、このように図式的に考え、解決方法を見出すことが自然とできるのだ。


これらは、すべてサンプルに対して、わたしなりの解釈をしたにすぎない。
これらの言葉のなかに、自分ならこんな言葉を使う、というのがきっとあるだろう。借金を返済するのは、恐怖ではなく、プライドかもしれない、それなら答えもまた変わるだろう。


より現状を理解したり解決するために、より問題を解決に近づくと思える言葉にどんどん変えていくことである。


一度つくった図も、どんどん書き換えるのだ。


すると、別の解決方法がいくらでも、山のように出てくるだろう。


解決できないと思っていた問題の解決方法がどこかに必ずあるのだ。
あとは、どれかを合理的に選択し、実行するのだ。


問題を解決するのに大切なのは『時間』である。


合理的に考えるなら、これらの選択肢でもっとも早く問題を解決できる方法を選択するべきだ。


なぜなら、キー問題の解決に時間がかかっていると様ざまな枝葉問題がどんどん発生し、いよいよ問題解決そのものに障害となってくるからだ。