平均寿命の内側で不老不死を願う

平均寿命を『死亡者の平均年齢』と単純に考えている人はいないだろうか?
しかし、単純に考えて、死亡者の年齢の平均が、『人並みといえる人生の長さの尺度』として適しているだろうか?


世代別人口分布を考慮すると、もし、人の出生率がずっと同じならば、0歳児の人数が一番多いはずである。


人は死ぬ前に必ず生まれなければならないからだ。


テストなら、はじめてでいきなり50点とれるかも知れないが、生まれてきていきなり50歳、即死亡ではなんのために生まれたか首を傾げざるを得ない。


しかも0歳児の死亡率は医療が進歩したと言っても相変らず高い。


生まれたときすでに4歳ということはありえず、子供は4歳になるまでに必ず何人かが死んでしまう。4歳児が4歳で死亡するためには、3歳児の死亡確率や2歳児の死亡確率を乗り越えて、4歳まで生き延びなければならない。


つまり、0歳児の死亡より4歳児の死亡の方が同じ死亡でも重いのである。


そもそも平均とういのは、両端に裾野のある山のような分布に適用する。
しかし、死亡時年齢は必ずしもそのような分布にはならない。


そのような分布で平均をとっても、それが必ずしも『人並みといえる人生の長さ』とは言えなくなる。


実際に、単純に死亡時年齢の平均を出すと、0歳児の人数の多さと死亡率の高さが平均を『人並みといえる人生の長さ』よりずっと下のほうに引下げてしまうだろう。


そこで平均寿命とはこのように考える。


0歳児が1歳児になるまえに死亡する確率 男0.00345 女0.00298
1歳児が2歳児になるまえに死亡する確率 男0.00051 女0.00044
(19回生命表より)


このように、死亡確率を積み上げ、足していくとある地点でそれが50%になる。
いろいろな危険や苦難になんとか対処しながらなんとか生きてきても、この年齢になるまでに、100人生まれた子供は半分が死んでしまうのだ。


この年齢が『人並みといえる人生の長さ』、つまり平均寿命なのである。


これは確率的に期待していい0歳児の余命ということだ。


年々平均寿命が発表され、その内側にいる人々は


「このまま平均寿命が延びていって、自分が死なないということはあるだろうか?」


と考える。ところが、人の死亡する確率は30を過ぎたあたりから年々増え始め、80歳が一年を生き延びる確率はずいぶん低いものになる。
当然、その先の死亡率はうなぎのぼりに高くなる。
厚生労働省発表の19回生命表(平成12年度)では


111歳の年内死亡率 男0.57147 女0.47454
112歳の年内死亡率 男0.59378 女0.49359


などとなっている。
これは生き残っている人がごく少ないので、その人が生きていると生存率は100%になるし、その人が死ぬと0%になってしまうので、過去5年の統計と混ぜているからである。最高齢年齢地帯では常に確率50%近くになり、それを超えると死亡率は100%(てかもう死んでるし状態)になる。


決して、不老不死は楽な話ではないのだ。