◎遺伝的アルゴリズム

菊川玲は東京大学在学中東大クイーンとして名を馳せて芸能界入りを果たした。


そんな彼女が理系の一類(建築工学)で「遺伝的アルゴリズムを適用したコンクリートの要求性能型の調合設計に関する研究」を卒論のテーマにしたことは一部では有名である。


さんざん探したが、かつてWEBに流れていたその論文はもはや見つからなかったが、過去に読んだ記憶によると、コンクリートは組成物質である砂・セメント・水の混合比によって強度が変化する、そこで遺伝的アルゴリズムによってその最適な調合法をみつける、というものである。


で、具体的になにをやるかというと


でたらめに作ったコンクリート同士をぶつけ、割れなかったグループから適当に選んで混合比率を混ぜ合わせ、新たにできたコンクリート同士をまたぶつけをなにも考えずただ延々と繰り返すのである。
最終的に「最強」となったコンクリートの混合比率はたぶん建築基準法で規定された比率と近似したはずである。(結論は覚えていない)


なかなか乱暴な話である。


ひたすらコンクリートを固めてはぶつけて壊す菊川玲を想像するのも一興だが、ここで遺伝的アルゴリズムのアプローチについて考えてみる。


そもそも遺伝的アルゴリズムとは、コンピュータプログラミング用語である。


そして、遺伝的とは、「遺伝子の交換と突然変異による新種の創造」と「淘汰」による「環境適応最適化アプローチ」である。
簡単に説明しようかと思ったが、菊川玲の話ほど簡単な例はないので割愛する。


菊川玲の実験では「混合比率の混ぜ合わせ」が遺伝子交換という生殖行動であって、「ぶつけて壊す」のが淘汰による「環境適応最適化」である。


ただし、菊川玲がどれほど「突然変異」要素をこの実験に応用したのかは不明である。少なくとも論文を一読しただけの記憶ではそれについて言及がなかったような気がする。


ただ、人間が繰り返し手順を実際に行って、あえて遺伝的アルゴリズムを使用する意味がほとんどない。という点が非常に重要かつ致命的だ。


遺伝的アルゴリズムによる新種創造と淘汰は、「生き物ではないコンピュータがそれを行うことができる」ということを実証したことで評価されるのだ。


人間が「切れる刀の作り方」や「おいしい料理」をほとんど科学的根拠もなしに「このやり方とあのやり方はまぁまぁうまくいった」という経験則をもとに、「こんどはこのやり方とあのやり方を取り入れて」延々と繰り返し、「結果がよかった」ものを残して淘汰を行い、失敗という突然変異も取り入れ、科学的に見ても最適と言える答えを最終的に見つけ出してきた方法と、菊川玲が東京大学を卒業するために行った実験はなんら変わりがない。


文化人類学ならともかく、科学の分野でそれを追体験することは遺伝的「退行」でしかないのだ。