正常な商取引
ある会社がある。
この会社では主に技術が売りである。
主要な取引先にA社があって、当社はここにはちょっと頭があがらない状況である。
当社の商品である技術をわかりやすくするために派遣業の時給で考えてみよう。当社はA社に技術を提供するが、それをわかりやすく技術者を派遣すると考える。
その時給はその時々で変化する。
普通なら時給が上がればうれしいものなのだが、当社の場合はそうでもない。
なぜなら、時給が上がりすぎると受注競争に負け仕事自体が減ってしまうからである。当社はどちらかというと、現在ヒマである。
A社はその点実に巧妙に立ち回って、当社の時給が上がるように策を労する。なぜなら、A社もまた技術者を派遣する仕事をやっていて、相対的に自社の時給が安い方が商売上有利だと知っているからだ。
信じられないかも知れないが、A社は当社のことを他の会社やマスコミなどに「すばらしい」と折り紙をつけて宣伝する。
考えてもみてほしい。
仕事をしまくっていっぱいっぱいになって、切り売りする時間がなくなったならともかく、当社もヒマはもてあましているのである。それなのに評価や噂でどんどんあおり、結果的に当社の時給が高いという印象をライバルに与えて仕事を奪ってしまうのである。
実績や実態がないのにである。
こんなやりかたは聞いたことがあるだろうか?
しかも、A社は資金繰りに困ると手形を切って「ウチが倒産したらあんた大変だよ、だからこれ換金して」と言っては持ってくる。
これは融通手形と言われていて、こんな手形の切り方をする会社とはふつうはつきあってはいけない。
しかし、当社は手形を引き受けないと相手が手形乱発の信用下落のため時給が下がってしまって、結果的に自社の受注にも影響すると知っているので、いやいやこれを引き受ける。
当社自体、すでに設備投資に資金を投入しすぎて、手形を乱発しているのにも関わらず、なのである。
設備投資をいくらやっても、製造できるのはヒマばかりでそれを消化することができない。
設備投資をやめると、会社自体の機能が低下するので、それもできない。
しかも、投資した設備の維持費が経営を大きく圧迫している。
あなたが経営者だったら、いったいどうするだろうか?
聡明な方ならすでにお気づきだろう。
これが日米国家間の寓話化した縮図なのである。