IT産業のしくみ

googleipo(株式公開)を申請して一月あまり経過した。
そのころに思ったが、そのまま書くと時事問題になってしまったことをつらつら考えていて、そろそろ書いてみたくなった。
なにしろ、googleの調達する資金は27億ドル(2970億円)、史上最大規模になるとみられているのだ。公開時の時価総額は250億ドル(2兆7500億円)になるといわれている。


確かにgoogle検索エンジンは優れている。
が、しかし、それは時価総額にして2兆7500億円に換算できる技術だろうか?(もちろん、設備を含めても)


yahooにしても(Microsoftはあえて除外するが)、あのホームページとサーバーに株の時価総額ほどの価値はあるだろうか?


そもそも、すでに完成し、利益を生んで自己採算しているシステムに27億ドルもの資金を投資する必要があるだろうか?


1兆円の経常利益を上げるトヨタ自動車の資本金が、3970億円なのである。グーグルの経常利益はおよそ約1億500万ドル(115億5000万円)なのである。この経常利益はipo後4%の配当でキレイに消えてしまうのだ。たかが1000万円の経常利益しか生まない会社が2億5000万円の株式を発行しようと言うのだ。しかもそれが時価総額で10倍にもなるというのだ。


その資金で全世界にアドワードの支店網を作ったとして、地域戦略すればするほど、グローバルITの強みが薄れてしまう。せいぜいが佐賀県の県民相手の地域商売では「佐賀県 ○○」というキーワードしか登録できない。
北海道から客が来ないからである。やればやるほど資金効率が悪くなるのは当然のことのように思える。


いったい、この巨額な資金でgoogleはなにをやらかそうと言うのか。
そのあたりが、どう考えてもわたしには見えない。
見えないというより、たぶん、ないのだろうと思っている。
googleが今後やりそうなことは、無料メールと新型BBS程度のものである。アドワード広告のシェアがまだ200%以上伸びる余地があるとしても、市場の「10倍」の期待には到底答えきれるものではないだろう。


googleは巨額の資金を得たら、新しいWEBサービスを次々に発表していくだろう。その開発費にも投資は振り向けられるだろう、しかし、それらの新サービスがお金を生み出すまで株価を維持し続けることはできないだろう。あまりに巨額な資本だからだ。


ありうるシナリオは資金にものを言わせて、技術を持つ会社を次々に買い取り、子会社をポコポコ作り、そして、子会社がポコポコと上場してまたしても資金を調達してしまうのだ。google持ち株会社のような感じになっていくだろう。


果たして、この構図のどこにgoogleの技術的優位が反映されるのだろうか?これは単に「新しい大金持ちの出現」ただそれだけのことになってしまうだろう。


子会社の多くが実際に資金を運用して資本から利益を生んだとしても、本当にその会社が社会にとって必要なら厳しくともマーケットから直接資金調達すればいいだけの話である。最初にgoogleが投資して、軌道に乗せてから株式を公開するのは「その方が資金が簡単に集まり、軌道に乗せるのが簡単」だからに他ならない。こういった企業の市場優位性は「金を持っている」ことに集約されてしまう。それならば、機関投資家の資金で十分間に合うはずである。なぜgoogleが一枚噛まなければならないのか?なぜ機関投資家までもがそれを期待するのか?
IT産業へ集まる資金というのは、いつも同じようなシナリオになっていく。多分に投機的、バブル的拡散になる。
それは、そもそもITが個人のアイデアレベルのものであるからだ。(あえてMicrosoftは除外するが)
「いいこと考えたね偉いね」程度のことが、とてつもないお金を集めてしまい、研究や開発で必要な資金を大きく上回ってしまうのである。そのお金がさまざまなベンチャーに還元されていくのは決して悪いことではない。ただ、その時、「いいこと考えたね偉いね」というタイプの会社が、厳しく審査して投資すべきところを的確に投資を行うことを期待するのはどうか、と思うのだ。


ネット関連ビジネスの企業による調達額の最高は米ネットスケープの約154億円だったが、その夢がいかに簡単に消えてしまったかは、衆目の知るところのはずである。


googleipoにはたまらない「夢」がある。
googleはその「夢」を集めて運用するのである。
もちろん、そこで働く人々にも「夢」がある。


大きすぎる夢に少ない資金、本当はこれくらいが丁度いいのだ。