ある決着

人生には決着をつけたいと思うことがいろいろ取り残されていく。
しかし、インターネットという武器を使って決着をつけることができる世の中になってしまった。もはや、決着をつけないことは怠惰であり、罪である。


今回はその第一弾「オリバー君のその後」


すでに昨年3月にスカパーで特集されて、ネット上でもずいぶんと記述があったのになぜか見落としていた。

オリバーは1960年、コンゴのジャングルで捕獲され、アメリカに運ばれた。チンパンジー調教師 Frank さんと Janet Burger さん夫妻が、赤ん坊のオリバーを手に入れた。Janet さんは回想する。「やがて生後4、5ヵ月になったある日、彼はまさしく立ち上がりました。そしてそれからは、ずっと直立していました。ほかの類人猿のように拳を地面につけることは、めったにありませんでした」
 人間同然の直立二足歩行に加え、外見的にもチンパンジーとは異なっていた。知能と性格も変わっていたオリバーは、成長するにつれて人間の習慣を身につけた。
 16歳となったオリバーはニューヨークの弁護士 Michael Miller さんに8000ドルで引き取られ、「科学的奇跡」として世界に紹介されて一躍スターダムにのし上がった。人間とチンパンジーのDNAを融合する秘密実験の産物だと主張する者もいれば、人間と類人猿とのハーフ、あるいは人間進化のミッシング・リンクだと論じる者もいた。
 アメリカを席巻したあと、オリバーは日本に行き、本国以上の熱狂を巻き起こした。2600万人もの視聴者を獲得したオリバーの特番では、血液分析がなされ、いくつかの細胞に、人間よりも1つ多くチンパンジーよりも1つ少ない染色体が発見された。

http://kontic.at.infoseek.co.jp/03/0303.html

さて、日本で熱狂的ブームを巻き起こしたオリバー君だが、当時を知るのはたぶん35歳以上の人だけであろう。
番組のプロデューサーはトンデモプロデューサー矢追純一と猪木VSアリ戦のプロモーター康芳夫(http://washtub.cocolog-nifty.com/tarai/cat395924/)であった。
ここで、オリバーは謎の類猿人と呼ばれ、人類進化のミッシングリングに当たる種とか、人間の遺伝子操作とか、チンパンジーと人間の混血ではないかと紹介された。実際には檻で運ばれたにも関わらず、飛行機の客室に乗るかのような演出をされたり、浴衣を着て番組出演したりした。また、売名目的のタレントがオリバーとセックスをしたいと名乗りを上げたりと、まさにトンデモない話に発展して行ったのだ。
しかも、日本側は、遺伝子を調査するという学術的目的で借り受けたらしいのだ。さすが。


そして、遺伝子調査の結果驚きの事実が!!

染色体がヒトは46、チンパンジーは48、そしてオリバーの数。「47」!!ええ〜!やっぱり混合種!?
でも検査ミスだという人もいて結局よくわからないという話。

そんなこんなで見世物的に扱うことに弁護士さんとこ批判が集中。飼えなくなって結局知人の動物園に引き取られる。
しかしその後動物園が廃園。オリバー行方不明という無責任なことに。

しかしピアノ奏者ずーっと行方を探してました。
8年(だっけ?)の年月が経って、もはや諦めかけてたところでついに発見。
解剖等の実験動物として研究所のオリに居たそうです。幸いまだオリバーは実験台にされる前で辛くも救出。
オリバー二足歩行なのにずっと背の低い狭いオリでしゃがまされてたらしくかわいそうであります。
しかしオリから8年ぶりに出してもらったオリバー。いきなり二足歩行。

んで、オリバーは現在いろんな実験動物を救出して自然に近い環境で暮らさせてるボランティアの人らのとこで、余生を送っているそうな。めでたしめでたし。

さて、ここで最後の調査を。現在の先端の技術ならDNA鑑定ができる。
オリバーはヒトなのか?サルなのか?最後の実験を行うことになりました。

結果。染色体は48。オリバーはチンパンジーです。ヒトと猿の混合種じゃないし、類人猿の生き残りとも違う。
ってジャポンの調査結果はなんだったんだ!おいおい日本人!

http://ch.kitaguni.tv/u/116/2003/11/

結局、オリバーはチンパンジー、または、チンパンジーの亜種または、チンパンジーの新種、ということらしい。
遺伝子の本数の調査は、結果を間違いようもないので、日本の側の捏造だった可能性が高い。


途中登場するピアノ奏者は、日本にオリバーを売り込んだ弁護士(彼らは直後にオリバーを売っている)と値段を競ってオリバーを手に入れることができなかった人のことである。


遺伝子といえば「チワワは犬に非ず」というコンテンツが今年出回った。遺伝子検査の結果チワワはなんとネズミだったのだ!
読んだ誰もがよくできたジョークだと関心したのだが、なんと英文の記事を翻訳して日本に紹介したご本人は本気にしていたらしい。

また実験ではチワワだけでなく、現在知られている数種類の犬が元々は違う動物を起源に持っていたことが明らかになった。ラサアプソはチベットの雪ウサギ、ペキニーズは中国の水生ネズミ(ドブネズミなど)、シーズーはヤマイタチ、ヨークシャーテリアはハトといった様子である。

http://x51.org/x/04/05/2658.php

ヨークシャーテリアはハト!
実際には、お詫びと訂正も含めてジョークだったのである。


話をオリバーに戻す。

現在、オリバーは42歳で、チンパンジーの平均寿命から5年を過ぎている。Swett さんは、「彼は落ち着いていますが、歯がありません――ある調教師が前にペンチで抜いたのです。彼の肝臓は、かつて1日に1本のワインを飲ませられたので傷んでいます。彼はまた盲目で、研究所のオリのせいでひどい関節炎をわずらってもいます」と現況を語った。「彼は孤独な生活を送っており、事実は彼がアメリカに連れて来られるべきでなかったということです。彼はアフリカに残されるべきでした。
http://kontic.at.infoseek.co.jp/03/0303.html


人間は動物を虐待して生きる生き物だ。
脳神経の研究者はいつもいつも生きた猫の頭を割って研究を続けているし、凄惨な事件の遺族はテレビに引きずり出されてエンターテイメントのために日々虐待されている。
わたしは、それらの虐待が完全になくなるなら、脳神経の実験も新薬の発明もなくなってもいいと思う。
しかし、脳神経の実験も、新薬の研究も、事件被害者の虐待も日々行われている社会で偽善を叫ぶ気はない。