人生の勝組負組は運で決まる

ここに、さいころがある。


このさいころは、あなたの人生である。


さいころをふって偶数が出ればラッキー、1ポイント。
奇数が出ればアンラッキー、−1ポイント。
そして、折れ線グラフを描いていく。


人生には何が起こるかわからない。
ほとんどのひとは、最初のスタートが0であるなら、0ラインに絡むようにぎざぎざした水平線を描くと信じている。


ところが実際はそうではないのだ。


実際に、さいころで実験をしてみればあきらかになるが、かなりの確率で(90%)、一度0ラインを突破した線は2度と0ラインにタッチすることはないのである。


実際に実験するのもたいへんなので、それがなぜかを簡単に解説すると、さいころによって描かれるグラフは、永久に勝ち続ける45度の上昇線と、永久に負け続ける45度の下降線の間の空間のどこを通ってもよい。同じ用紙に繰り返しグラフを描いていくと、均等に黒くなってくるハズである。偶然は均等で平等であるというのは、そういう意味なのである。
そして、0ラインに絡むように進むレンジの広さは、全体の空間の広さに比べると10%程度しかない、ということなのである。


したがって、グラフは上昇または降下で0ラインから離れると、そこから逆転することはなかなかないのである。


この話の核心はここだ。
ひとは、平等という言葉を完全にはき違えている。
平等とは、誰でも勝組負組どちらかへいく可能性がある、という点で平等なのであって、勝組から負組へ転落する可能性は10%程度に過ぎず、その可能性は等しく同じだという点で平等なのである。


ほんとうに、世の中が権力や金や才能に左右されず、すべての人が等しく平等で、運によってのみ人生が決定されてくるとしたとしても、歴然と勝組負組が存在し、その立場は容易に逆転できないのだ。

 ある決着

人生には決着をつけたいと思うことがいろいろ取り残されていく。
しかし、インターネットという武器を使って決着をつけることができる世の中になってしまった。もはや、決着をつけないことは怠惰であり、罪である。


今回はその第一弾「オリバー君のその後」


すでに昨年3月にスカパーで特集されて、ネット上でもずいぶんと記述があったのになぜか見落としていた。

オリバーは1960年、コンゴのジャングルで捕獲され、アメリカに運ばれた。チンパンジー調教師 Frank さんと Janet Burger さん夫妻が、赤ん坊のオリバーを手に入れた。Janet さんは回想する。「やがて生後4、5ヵ月になったある日、彼はまさしく立ち上がりました。そしてそれからは、ずっと直立していました。ほかの類人猿のように拳を地面につけることは、めったにありませんでした」
 人間同然の直立二足歩行に加え、外見的にもチンパンジーとは異なっていた。知能と性格も変わっていたオリバーは、成長するにつれて人間の習慣を身につけた。
 16歳となったオリバーはニューヨークの弁護士 Michael Miller さんに8000ドルで引き取られ、「科学的奇跡」として世界に紹介されて一躍スターダムにのし上がった。人間とチンパンジーのDNAを融合する秘密実験の産物だと主張する者もいれば、人間と類人猿とのハーフ、あるいは人間進化のミッシング・リンクだと論じる者もいた。
 アメリカを席巻したあと、オリバーは日本に行き、本国以上の熱狂を巻き起こした。2600万人もの視聴者を獲得したオリバーの特番では、血液分析がなされ、いくつかの細胞に、人間よりも1つ多くチンパンジーよりも1つ少ない染色体が発見された。

http://kontic.at.infoseek.co.jp/03/0303.html

さて、日本で熱狂的ブームを巻き起こしたオリバー君だが、当時を知るのはたぶん35歳以上の人だけであろう。
番組のプロデューサーはトンデモプロデューサー矢追純一と猪木VSアリ戦のプロモーター康芳夫(http://washtub.cocolog-nifty.com/tarai/cat395924/)であった。
ここで、オリバーは謎の類猿人と呼ばれ、人類進化のミッシングリングに当たる種とか、人間の遺伝子操作とか、チンパンジーと人間の混血ではないかと紹介された。実際には檻で運ばれたにも関わらず、飛行機の客室に乗るかのような演出をされたり、浴衣を着て番組出演したりした。また、売名目的のタレントがオリバーとセックスをしたいと名乗りを上げたりと、まさにトンデモない話に発展して行ったのだ。
しかも、日本側は、遺伝子を調査するという学術的目的で借り受けたらしいのだ。さすが。


そして、遺伝子調査の結果驚きの事実が!!

染色体がヒトは46、チンパンジーは48、そしてオリバーの数。「47」!!ええ〜!やっぱり混合種!?
でも検査ミスだという人もいて結局よくわからないという話。

そんなこんなで見世物的に扱うことに弁護士さんとこ批判が集中。飼えなくなって結局知人の動物園に引き取られる。
しかしその後動物園が廃園。オリバー行方不明という無責任なことに。

しかしピアノ奏者ずーっと行方を探してました。
8年(だっけ?)の年月が経って、もはや諦めかけてたところでついに発見。
解剖等の実験動物として研究所のオリに居たそうです。幸いまだオリバーは実験台にされる前で辛くも救出。
オリバー二足歩行なのにずっと背の低い狭いオリでしゃがまされてたらしくかわいそうであります。
しかしオリから8年ぶりに出してもらったオリバー。いきなり二足歩行。

んで、オリバーは現在いろんな実験動物を救出して自然に近い環境で暮らさせてるボランティアの人らのとこで、余生を送っているそうな。めでたしめでたし。

さて、ここで最後の調査を。現在の先端の技術ならDNA鑑定ができる。
オリバーはヒトなのか?サルなのか?最後の実験を行うことになりました。

結果。染色体は48。オリバーはチンパンジーです。ヒトと猿の混合種じゃないし、類人猿の生き残りとも違う。
ってジャポンの調査結果はなんだったんだ!おいおい日本人!

http://ch.kitaguni.tv/u/116/2003/11/

結局、オリバーはチンパンジー、または、チンパンジーの亜種または、チンパンジーの新種、ということらしい。
遺伝子の本数の調査は、結果を間違いようもないので、日本の側の捏造だった可能性が高い。


途中登場するピアノ奏者は、日本にオリバーを売り込んだ弁護士(彼らは直後にオリバーを売っている)と値段を競ってオリバーを手に入れることができなかった人のことである。


遺伝子といえば「チワワは犬に非ず」というコンテンツが今年出回った。遺伝子検査の結果チワワはなんとネズミだったのだ!
読んだ誰もがよくできたジョークだと関心したのだが、なんと英文の記事を翻訳して日本に紹介したご本人は本気にしていたらしい。

また実験ではチワワだけでなく、現在知られている数種類の犬が元々は違う動物を起源に持っていたことが明らかになった。ラサアプソはチベットの雪ウサギ、ペキニーズは中国の水生ネズミ(ドブネズミなど)、シーズーはヤマイタチ、ヨークシャーテリアはハトといった様子である。

http://x51.org/x/04/05/2658.php

ヨークシャーテリアはハト!
実際には、お詫びと訂正も含めてジョークだったのである。


話をオリバーに戻す。

現在、オリバーは42歳で、チンパンジーの平均寿命から5年を過ぎている。Swett さんは、「彼は落ち着いていますが、歯がありません――ある調教師が前にペンチで抜いたのです。彼の肝臓は、かつて1日に1本のワインを飲ませられたので傷んでいます。彼はまた盲目で、研究所のオリのせいでひどい関節炎をわずらってもいます」と現況を語った。「彼は孤独な生活を送っており、事実は彼がアメリカに連れて来られるべきでなかったということです。彼はアフリカに残されるべきでした。
http://kontic.at.infoseek.co.jp/03/0303.html


人間は動物を虐待して生きる生き物だ。
脳神経の研究者はいつもいつも生きた猫の頭を割って研究を続けているし、凄惨な事件の遺族はテレビに引きずり出されてエンターテイメントのために日々虐待されている。
わたしは、それらの虐待が完全になくなるなら、脳神経の実験も新薬の発明もなくなってもいいと思う。
しかし、脳神経の実験も、新薬の研究も、事件被害者の虐待も日々行われている社会で偽善を叫ぶ気はない。

 IT産業のしくみ

googleipo(株式公開)を申請して一月あまり経過した。
そのころに思ったが、そのまま書くと時事問題になってしまったことをつらつら考えていて、そろそろ書いてみたくなった。
なにしろ、googleの調達する資金は27億ドル(2970億円)、史上最大規模になるとみられているのだ。公開時の時価総額は250億ドル(2兆7500億円)になるといわれている。


確かにgoogle検索エンジンは優れている。
が、しかし、それは時価総額にして2兆7500億円に換算できる技術だろうか?(もちろん、設備を含めても)


yahooにしても(Microsoftはあえて除外するが)、あのホームページとサーバーに株の時価総額ほどの価値はあるだろうか?


そもそも、すでに完成し、利益を生んで自己採算しているシステムに27億ドルもの資金を投資する必要があるだろうか?


1兆円の経常利益を上げるトヨタ自動車の資本金が、3970億円なのである。グーグルの経常利益はおよそ約1億500万ドル(115億5000万円)なのである。この経常利益はipo後4%の配当でキレイに消えてしまうのだ。たかが1000万円の経常利益しか生まない会社が2億5000万円の株式を発行しようと言うのだ。しかもそれが時価総額で10倍にもなるというのだ。


その資金で全世界にアドワードの支店網を作ったとして、地域戦略すればするほど、グローバルITの強みが薄れてしまう。せいぜいが佐賀県の県民相手の地域商売では「佐賀県 ○○」というキーワードしか登録できない。
北海道から客が来ないからである。やればやるほど資金効率が悪くなるのは当然のことのように思える。


いったい、この巨額な資金でgoogleはなにをやらかそうと言うのか。
そのあたりが、どう考えてもわたしには見えない。
見えないというより、たぶん、ないのだろうと思っている。
googleが今後やりそうなことは、無料メールと新型BBS程度のものである。アドワード広告のシェアがまだ200%以上伸びる余地があるとしても、市場の「10倍」の期待には到底答えきれるものではないだろう。


googleは巨額の資金を得たら、新しいWEBサービスを次々に発表していくだろう。その開発費にも投資は振り向けられるだろう、しかし、それらの新サービスがお金を生み出すまで株価を維持し続けることはできないだろう。あまりに巨額な資本だからだ。


ありうるシナリオは資金にものを言わせて、技術を持つ会社を次々に買い取り、子会社をポコポコ作り、そして、子会社がポコポコと上場してまたしても資金を調達してしまうのだ。google持ち株会社のような感じになっていくだろう。


果たして、この構図のどこにgoogleの技術的優位が反映されるのだろうか?これは単に「新しい大金持ちの出現」ただそれだけのことになってしまうだろう。


子会社の多くが実際に資金を運用して資本から利益を生んだとしても、本当にその会社が社会にとって必要なら厳しくともマーケットから直接資金調達すればいいだけの話である。最初にgoogleが投資して、軌道に乗せてから株式を公開するのは「その方が資金が簡単に集まり、軌道に乗せるのが簡単」だからに他ならない。こういった企業の市場優位性は「金を持っている」ことに集約されてしまう。それならば、機関投資家の資金で十分間に合うはずである。なぜgoogleが一枚噛まなければならないのか?なぜ機関投資家までもがそれを期待するのか?
IT産業へ集まる資金というのは、いつも同じようなシナリオになっていく。多分に投機的、バブル的拡散になる。
それは、そもそもITが個人のアイデアレベルのものであるからだ。(あえてMicrosoftは除外するが)
「いいこと考えたね偉いね」程度のことが、とてつもないお金を集めてしまい、研究や開発で必要な資金を大きく上回ってしまうのである。そのお金がさまざまなベンチャーに還元されていくのは決して悪いことではない。ただ、その時、「いいこと考えたね偉いね」というタイプの会社が、厳しく審査して投資すべきところを的確に投資を行うことを期待するのはどうか、と思うのだ。


ネット関連ビジネスの企業による調達額の最高は米ネットスケープの約154億円だったが、その夢がいかに簡単に消えてしまったかは、衆目の知るところのはずである。


googleipoにはたまらない「夢」がある。
googleはその「夢」を集めて運用するのである。
もちろん、そこで働く人々にも「夢」がある。


大きすぎる夢に少ない資金、本当はこれくらいが丁度いいのだ。

 人類のジレンマ2

id:mind:20040523では、mind均衡というチームとしての利得を優先した場合の均衡状態などについておもしろいトピックが書かれている。
一読をお勧めする。
今回はこれに触発されて続編となった。


まず前回のおさらい。
利得表を書いてみよう。

取りうる戦略
C:協力(Cooperation)
D:裏切り(Defecrion)


  Player.1\Player.2
        C      D

    C   RR     ST  

    D   ST     PP

S:裏切られる(=Saint)
P:相互裏切り(=Punishment)
R:相互協調(=Reward)
T:裏切る(=Temptation)


囚人のジレンマが成り立つには決まった条件がある。
効用の条件:S<P<R<T、R>(S+T)/2

前回わたしが協調したかったのは、

裏切られ<相互裏切り<相互協調<裏切り
という前提と
相互協調の利得が裏切った場合の平均より大きい
という前提のどちらかを崩せばジレンマは解消する、ということだ。

逃れられないジレンマに見えるモノも、実は前提が結果を厳格に規定している、とういことだ。


ここから、今回の本題になる。
この囚人のジレンマは、おどろくほど簡単な図式にも関わらず、税制や外交、組合問題、核兵器戦略など多くの事象においてこの状態を散見できる。
ところが、そのほとんどが、なぜジレンマに陥るのかの前提部分に遡る検証というのがない。


ジレンマに陥らないためには、どうすればよいのか?
ということである。


前回は、ジレンマの説明とオマケ的心理テストでほとんど終わってしまって結論があいまいなままである。


ジレンマに陥らないためには、前述の前提を崩せばよい。
さらにもう一つ、いつでもジレンマに陥るような選択からは逃れられる。


囚人は否応なしだが、このようなジレンマに突入せざるを得ない外交状況とはなんだろうか?たぶんいくつかのバインドに拘束された結果、無理矢理このようなジレンマにつっこむことになるのだと思う。
例えば、核兵器戦略を観てみよう。


核兵器を先に使用してしまえば自分たちに都合のいい世界を築ける。
しかし、互いに核兵器を放棄すれば人類滅亡の危機は無くなる。
もしも、互いに核兵器を使えば人類は滅亡する。
かといって、相手が撃ってきて何もしなければ自国が滅びる。


アメリカとソ連が取った戦略は「何もしない」である。
この時、アメリカは戦略的にそれがベストだと計算していた。
この時、ソ連は核を防衛兵器としてしか考えていなかった。


この結果、
有利な核兵器を作れば自分たちにとって囚人のジレンマは解消する。
という、「何もしない」状況を維持するためのドクトリンが働いて核の軍備拡張競争が始まった。アメリカの経済学者たちは、これでソ連が経済的に破綻すると完全に予測していた。そしてその通りになった。


そもそも、ソ連は空母や長距離爆撃機など、他国を攻めるための兵器はほとんど持っていなかった。し、他国侵略の意図はないと再三国連で訴えてきた。ソ連の軍事ドクトリンはあくまで専守防衛であり、挑発的な軍備は決して拡張しなかった。それに対して、アメリカは常に挑発的、攻撃的軍備を進め、ソ連より遙かに多くの国で紛争の火種になった。
すべては、ソ連を経済的な破綻に誘い込むための戦略であり、同時に政権を維持するための国内向けの戦略でもあった。


ソ連崩壊後、アメリカは仲間を売ることもなくまんまと釈放された囚人のような状況になった。ソ連は秘密を守る期限を全うするまえに獄死してしまい、アメリカはそうなることを読んでいたと言っていい。


今回強調する部分はここである。
囚人のジレンマには必ず前提条件があり、ジレンマに陥ったり、陥りそうになっても逃れる選択肢を持たない場合、または、ジレンマに陥らないために共通の利得が生じた場合、その上位のルールによってその状態は利用され得る、ということだ。


詐欺師がたびたび人をだますためには、99の取引が正常に行われ、相手もそれを当然と思うか、あるいは、相手は取引を壊すことが当たり前のような世の中であってはいけないと思っていなければならない。
完全な囚人のジレンマの状況下では詐欺師はいつもソンをしてしまうからだ。

 傘がキライ

わたしは雨が好きだ。
雨の中を歩くのが好きだ。


わたしは傘がキライだ。
特に傘を所有することがキライだ。


というわけで、今日も傘ナシで出勤。


移動はほとんど車なので問題なし。
仕事帰りに最近プレッシャーの多い店長を誘って飲みに行ったのだが、こういうときはちょっと困る。
いつもなら、雨の中を平気で濡れて歩くのだが、店長は(こいつもわたしが傘ナシでふらふら歩いて行くので車から傘を出さずに出てきてしまったのだが)上着を頭からかぶって小走り。
仕方なくわたしも小走り。


一日中雨の降っている日に、傘ナシで小走りのオヤジ二人。
バカ丸出し。


そもそも、わたしには傘がキライになる決定的な理由がある。
高校生のころ、午後から降り出したときなど学校帰りに傘があるヤツとないヤツでは「バカ」と「りこう」がくっきり分かれる。
小学校のころから「忘れ物名人」と必ず担任にあだ名をつけられたわたしは、傘を持ってきたためしがなかった。
それでも高校生程度の頭脳をもってして、この「バカ」「りこう」に分かれるさまに気づいて、不承不承で傘を買ったのだが、それがバッタものだったために数歩歩くだけでバサッと閉まる粗悪品だった。


そのうちあんまりバサバサ下りてくるのでそこらに生えていた草を止め輪に突っ込んで固定してやった。これで安心。
そう思って数歩歩いたとたん、バシャーッ。車道からの強烈な水ハネをまともに受けて全身ずぶぬれになってしまったのだ。顔にも口の中にまで水が入って、まさに「今、川から上がって来ました」くらいに濡れてしまったのだ。
ずぶぬれのまま、草が逆さに生えている珍妙な傘を持って数歩歩いたとき、そのあまりの「バカ」な姿の自分に、ついにわたしは心底頭にきて、道端に傘を捨てそのまま濡れて帰ったのだ。
これほどの文明を築き上げた人類が、傘という前近代的雨具を未だに使い続けているのは絶対におかしい。
晴れた日には役にたたないし、すぐ壊れるし、ちゃんとさしていても、雨だれが肩に掛かるし、せっかく用意していても結局ズボンは汚れるし、こんな不完全なものはない、と、気がついたのだ。こんなもののあるなしで「バカ」と「りこう」に分けられてたまるか。こんなバカなもの持ってるやつがバカだと結論した。


わたしの車には傘が常備してあるが、それは傘のない同乗者のためと、同乗者が傘を持っていると傘のないわたしにわざわざさしかけてくるのだ。これがまたうっとうしい上に、結局肩だけ雨だれでズブズブに濡れてしまう。


そんなある日、雨に濡れながらタクシー乗り場でタクシーを待っていると、突然雨がやんでしまった。あれ?と振り返ると、後ろに立ってタクシーを待っていた美人のお姉さんが、後ろからわたしを傘に入れてくれたのだった。それでひとことふたこと言葉を交わしたのだが、もう20年もたつのにそんなことを覚えている。傘嫌いのわたしが、一生のうちであの時だけは「傘っていいなー」と心から思った。ただし、傘がいいなーと思ったのは生涯かけてその一度である。


日ごろ傘に頼って生活している人はわからないだろうが、雨の水が多少服にかかっても5分程度はまったく問題ない。
多少雨に濡れても、20分で乾いてしまう。
30分雨に濡れて歩いても下着まで浸食してくるのは相当な豪雨のときだけで、そんなときは傘をさしてもたいていは靴やズボンはどうせドロドロである。どうせ上下あわせてクリーニングするならいっそ濡れてしまってもなんら問題ない。
また、日ごろカバンに折りたたみ傘など常備している人にはわからないだろうが、ほとんどの季節で「雨に濡れることは気持ちがいい」。


そんな確信を日増しに強くするある日、某タカヨシからこんな話を聞いた。タカヨシの祖父は鹿児島の人で薩摩隼人を自任する男の中の男だった(らしい)。あるときタカヨシが祖父のいる父だか母だかの実家に遊びに行って、祖父と外を歩いていると突然相当な勢いでにわか雨が降り始めた。タカヨシはあわてて走り出したが、後ろから声がする。
「タカヨシ、タカヨシ」
見ると祖父が悠々と歩きながら呼んでいる。
雨に濡れながらタカヨシはわざわざ祖父のところまで戻るしかなかった。すると、祖父が言った。


「雨ごときで男が走ったらいかんたい」


雨ごとき。
男がどんなものか、男が走るべきときはどんなときか(やっぱり国事?)祖父の言外の意図はピンとこなかったが、「雨ごとき」という言葉はわたしに強くヒットした。
雨の中で傘を差そうとせず悠然と歩くわたしに、祖父を思い出したとタカヨシは言ったのである。


ただ、タカヨシの祖父の残念なところは、雨が嫌なものという認識を捨てきれていないところだ。嫌だからこそ、雨ごときで走らず(嫌なことでも)男は耐えて歩け、というのは傘ギライが高じて雨が好きになってしまったわたしには、まだまだ世間を知らないコドモだなという感はぬぐえなかったのだ。


そんなある日、わたしが雨の中濡れながら家に入ってくるのを見て、母はこう言った。
「あんた、ただでさえ貧相なんだから、あんたが濡れてトボトボ歩いてるのを見るとあたしゃ濡れねずみって言葉をいつも思い出すよ」


それ以来、わたしは雨の日は胸をはって堂々と歩くように心がけるようになった。顔にもろに雨が降りかかるようにわざわざ空を見上げたりもする。
500円程度のビニール傘を一生の間に100本くらい買って、買ったそばからどこかに忘れ、それでも雨を見るたび疑問も持たずに傘を買い、あまつさえ近場に傘を売っていないと雨の中を走りまわって傘を売っている店を探す人にはわからないだろうが、顔にかかる雨は格別に気持ちがいいのだ。

 競馬で勝つ

最近実に3年ぶりに競馬を見に行った。


初版のダービースタリオンのおかげで競馬に興味を持ち、ダービースタリオンのおかげでギャンブルとして競馬にのめりこむことなく、その奥深さを垣間見ることができたと思う。
競馬場では賭けることは二の次なので、食べ物を買いにいくときやこれといって考えがまとまらないときは買わずに見送ることも多い。


ただ、勝つことに興味がないわけではない。
実は大有りである。


競馬の必勝法というものを研究するのが好きだったのだ。
競馬場では勝つことは二の次だが、理論の場では勝たねばならない。半年間競馬場に通うことなく、研究に没頭したこともある。
結論から先に言うと、競馬のギャンブル的な必勝法というのはない。
もちろん、アメリカにも日本にも勝ち越している人はたくさん居るし、それを職業とする人もいる。
彼らの勝ち方は「鞘を取る」方法に近い。元金の数倍の年利を稼ぎ出すことは(少なくともわたしの知る限り)ない。
彼らは数十万、数千万、あるいは時に数億の資金を運用して平均して3〜20%の利益を得ていることが多いようだ。
世の中にはそれより粗利益率のいい商売は掃いて捨てるほどあるので、あえてこの方法を取るのは利益より、競馬が好きだからなのだろう。


競馬の必勝本もいろいろなものがあるが、論理と実践に裏打ちされたものは数少ない。


その中でも、これから紹介する三冊は出色と言っていいと思う。




「競馬探求の先端モード」
いわゆるスピード指数の先駆者がその論理をわかりやすく説いている良書。前段の半年間の研究はスピード指数を計算するソフトを作って過ごしていたのだ。
スピード指数の原理は非常に簡単で、馬のレースタイムから馬の潜在能力を指数化し、比較して予想する。なので初めての場や初顔合わせのレースでオッズが偏向したとき威力を発揮することが多い。
わたしのやり方は、データ区間中のすべての場に一定割合以上登場する馬をすべて抽出し、それを「基本馬群」として基本馬群の平均的な速度差をすべての競馬場のすべてのコンディションで統計する。
これが「競馬場指数」と「馬場コンディション指数」となり、ある競馬場のあるコンディションで○○秒で走る馬は、別の競馬場のあるコンディションでは○○秒で走ると予想できる。という感じだ。馬のスピードを比較する素地を作り、初めての場や初めての顔合わせでも、どれだけの力差があるか客観的に比較できるのだ。
さまざまな苦難を乗り越えてそのソフトは完成し、過去4年の中央競馬全レースのデータを解析し、次年一年分をそのデータから予測して購入するシミュレーションも行った。結果は年利12%。相当な資産がなければこれでいい思いをすることは不可能だと思った。しかも、競馬新聞にスピード指数が掲載されるようになって、ソフトを使う理由もなくなったし、スピード指数を織り込んでオッズが最適化されてしまったので利ざやはさらに減ってしまった。今でもレース結果が分散する地方競馬では努力しだいでこのソフトを動かすことはできるだろう。
(もちろん、データ収集の努力に見合わないとは思うが)
スピード指数の原理や、それを発見して誰にも知られず応用して大きなレースを勝ち抜くドキュメンタリーとして最高におもしろい読み物である。


「超馬券論」
馬を一切見ず、一切予測せず、馬券の買い方で鞘を抜く方法である。簡単に言うと最もオッズの低い馬券が最も当たる。というしごく当然の観察結果から、単勝一点賭けで「外れるときより当たるときに多く賭ける」ことで鞘を抜く。しかし外れるとき、当たるときがわからないのが競馬である。どのようにしてそれを実践するかというと、負けたら次のレースでは「負け金プラス目標利回り」だけの利益がでるように徐々に掛け金を上げていくのである。こうすると何回負けようが最終的には「目標利回り」が残る。結果からすると、負けているときの掛け金の総額よりも勝ったときの掛け金総額の方が多くなり論理的に、「外れるときより当たるときに多く賭ける」ことができる。平均するとオッズが一番低い馬券はおよそ3回に1回当たる(らしい)ので、目標利回り10%程度に抑えればそれほど多額の資金は必要ない。
これは間違いなく必勝法である。
ただし、これを実践すると競馬がつまらなくなる。
読み物としては数理に走るのはいたしかたないが、簡単な計算しか使わないし、語り口調が講義のようで楽しく読める。


「競馬馬の見方がわかる本」
馬そのものをパドックで見抜く方法である。姿勢や筋肉のつき方、汗のかき方、目、歩き方、走り方、しぐさ、などいい馬の見方が丁寧に解説してある。
たぶん、競馬をもっとも楽しく見る方法はこれだろう。
具体的な実践方法はなんにも解説してないので、賭け方を間違えればこの知識で簡単に破産することができる。
しかし、馬を見るのは重要だ。それに、競馬新聞とパドックだけで場当たり的に競馬を楽しむには最低限の知識だと思う。




最終的にわたしが到達した馬券の買い方は、「馬を見る」である。自分流に適当にアレンジしているので、上記の本の解説ととらないで欲しいのだが、基本的に尻を見れば馬の体力とコンディションはわかる。筋肉がぐりぐり見える馬はやせすぎ、あまり見えない馬は太りすぎ、見える筋肉がたくさんついていてボリューム感があり、高く盛り上がっている馬がいい。先行タイプの馬は多少ボリューム感が劣っていてもスラッと美しければよい。
次に、歩く姿勢で見る。首を高く上げてきょろきょろしない馬がよく、尻尾を下げている馬は買えない。多少のイレコミは返し馬での騎手との折り合いが悪くなければ無視。
あとは競馬新聞の予想も適当に判断に入れながら、連複で買う。
基本的には一点買いだが、迷ったときも3〜4点以内にまとめる。
ボックスで買い「配当負け」する原因は「当たるのは一組」という基本を忘れ、可能性と組み合わせを考えすぎているからだ。競馬は可能性と組み合わせを考えるゲームではない。勝つ馬を当てるゲームだ。絞り込めないということは、すでに負けているということだ。頭で流すくらいなら単勝一点全力賭け。
基本は馬連だが、オッズが負ける時と気になる馬が枠で収まるときは枠で買う。


前回は2レースから7レースまで遊んで、3勝(うち連勝複式一点買い2)2負およそ200%の回収利回りであった。


ちなみに、JRAは毎年競馬予測ソフトのコンクールを行ってる(もしかしたらもうやってないかも知れないが)そこで上位に来るソフトは要注意である。買い方がたいてい中穴や穴を狙うようになっていて、大きな穴を拾った年には上位に来るが、はずすと悲惨な結果になる。ソフトのクセとレース結果との相性があるのだ。穴を拾うソフトはパラメータでクセを作り安いので、わたしがソフト制作者なら、同じソフトの外見とパラメータを変えて複数売り、一番当たってるソフトを売りまくる。
やはり毎年年利で10%そこそこ稼ぐソフトは本命を丁寧に拾うパターンが多く、信用できる。

 祝ってやる

kido2004-05-18

ネタもと(不明)
4月ごろから方々で散見。
2chの株板で日経暴落時に復活。


最初に文通した女の子の最初の手紙に
「脳みがあったらなんでも相談してね」
と書いて出したことに数ヵ月後に気がつき
もうバレたか、いつバレるかと死にたくなり
理由も告げずに文通を打ち切ったことを思い出した。
でも、この人に比べたら。


TV画像のキャプチャでタイトル入れ込み
「劇撮!青木ヶ原樹海 残された痕跡」
というあまりに出来すぎたつくりなのでよく見れば、
時刻とタイトルのスーパーのボケ具合がバラバラ。
よって、ほぼ、これは偽造じゃないかと。

おっきい画像の直リンク
http://monokuro.tv/cache/data/200404/09/www.dream-fact.com/lovers/nandemo/img-box/img20040407051524.jpg

出展情報募集します。