○男女の利害は一致しない

男と女の利害は得てして一致しない。


女は心を許した相手に安心して依存する。


男は心を許した相手を全力で守ろうとする。


こうでばかりなら利害は一致しているが、女は過剰に愚痴っぽくなり、『あの人ったら恋人にはわたしの悪口平気で言うのよ』などと、お前もやーんと突っ込みをいれたくなるほどに客観性がなく、そこまでもかと呆れた上にさらに予想だにしなかったくらいに甘えた考えをしてみせる。


男は守るというより所有者のように振舞いたがり、あれこれ詮索し拘束する。携帯のアドレスや履歴のチェックはするし、上司と飲みに行くだけで不機嫌になる。『おれの上司は同性だけど、おまえの上司は異性じゃん』と勝ち誇ったように言う。そのくせ、外からの誘惑に弱いのは圧倒的に男なのだ。


もともと男と女は性質が違う。


そもそも、違うようにできている。


女は貴重な人生の時間を子育てで浪費するし、男は仕事で浪費する。
それぞれが、そのために頭がチューニングされている。


ところが、人は野生動物ではないので子育てや仕事よりもしたいことがある。
実際、型にはまったオス的男やメス的女でない者ほど、進化した人類を気取ったりするが、それもいたしかたがない事実なのだ。


そこが動物と違うところで、そして、つきない悩みのスタートラインなのだ。


で、結局のところ女は家事が得意で愚痴をいくらでも聞いてくれる夫を求めるし、男は自立してかっこよく仕事する女を求める。それぞれがある程度自分の仕事を放棄して、実は読書だのスポーツだのにいそしむ時間が欲しいからだ。


だがしかし、仕事から帰った夫が皿を洗いながら上司の愚痴を延々と語り、語り終えたと思ったらこんどは自分までもをネタにしてさらに愚痴り、その上『やさしくないもん』などと言い出すことを女はほんとに望んでいるだろうか?


そんな男もいないでもないが、それらはたいてい真っ先にフラれ、結婚など数ヶ月も続かない。


また、仕事に夢中でいきあたりばったりに予定を変える女を男はじっと待てるだろうか?道を間違えてもあてずっぽうで走りつづける女の車に、男はガマンして乗りつづけることなどできるだろうか?その上誘惑に弱かったら?


男と女の利害が一緒だったら、どちらかがやりたいことはどちらかもやりたいし、どちかが嫌なことはどちらかも嫌なので、結局のところその関係は続かない。


結局、男と女は違い、その違いのせいで互いに理解できず、しかし、その違いのせいでイライラしながらもギリギリ一緒にやっていけるのだ。


人が強欲である限り、自分程度に強欲な相手と一緒に暮らして『これはお徳だった』と思えるはずがないのである。


だから、好きと感じられる部分と、嫌いと感じられる部分が微妙に違うようにチューニングされていて、なんとか一緒にやっているのだ。


だったら、衝突する利害のレベルを思い切り下げることである。


どのみちすべての利害が一致しないなら、利も害も低レベルで維持する方がストレスは少ない。


相手に多くを望まず、多少のことには目をつぶる。
そのかわり、自分も相手にすべてを合わせることを拒否する。


それはまるで、『ろくでなしと結婚したことを認めて受け入れ、すっかりあきらめの境地に入ったような生活』のように見える。


子供のような幼い願望から見ればそうかもしれない。しかし、それは願望が幼く互いの違いを理解していないからだ。


大人とはあえてそれを選択できる者のことなのだ。


だから、そんな選択をしても大人は子供とちがって、こんなこともできる。


ごくたまに利害が一致したら、その時はともに喜んだり悲しんだりできるのだ。